春節にまつわる伝説シリーズ 第3回:「福の逆さ貼り」の由来

春節には、家の入り口や部屋の壁に「福」の文字が書かれた赤い紙を飾る風習があります。この「福」の字を逆さに貼ることで、幸福を招くと言われています。しかし、なぜ逆さに貼るのでしょうか?その由来には、春節にふさわしいユニークで心温まる物語があります。

今回は、この「福の逆さ貼り」の伝説を物語形式でご紹介します。


福の逆さ貼りの伝説 ~皇帝と貧しい家族~


1. 貧しい家族と「福」の願い

昔々、ある村に貧しい一家が住んでいました。この家族は春節を迎える準備をする余裕もなく、家は古くて壊れかけ、食べ物も十分にありません。それでも家族は互いに励まし合い、来年こそは良い年になるよう祈り続けていました。

「福が我が家にも訪れますように……。」

ある日、村を訪れた旅人が、その家族に赤い紙と筆を渡し、「福」の文字を書いて家に貼るように勧めました。「福」は幸運を意味し、これを飾ることで家に幸福を招くとされています。

家族は喜んでその提案を受け入れ、家の門に「福」の文字を貼りました。しかし、子供たちがはしゃぎながら手伝ううちに、誤って「福」の字を逆さに貼ってしまったのです。


2. 皇帝の視察

その頃、この村にはある皇帝が訪れる予定でした。皇帝は春節を迎える村人たちの様子を見るため、側近を連れて村を視察していました。

皇帝は貧しい家族の家の前で足を止め、不思議そうに門を見上げました。

「なぜ、この家では『福』の字を逆さに貼っているのだ?」

側近たちも驚き、「これはきっと間違いでしょう」と答えました。しかし、家族が間違いを恐れながらも事情を説明すると、皇帝はしばらく考え、にっこりと笑いました。


3. 皇帝の気づきと機転

皇帝はこう言いました。

「『福』を逆さに貼ることで、『福が到来する』という意味になるではないか!これはむしろ縁起が良いではないか。」

中国語では、「倒(逆さ)」と「到(到来)」が同じ発音「dào(ダオ)」であるため、「福を逆さにする」は「福が到来する」という意味にもなるのです。

皇帝はこのユーモアに富んだ解釈を喜び、家族を励ますために彼らに食べ物や金品を与えました。そして、この出来事を村全体に広め、「福を逆さに貼ることで幸福が訪れる」という新たな習慣が生まれたのです。


「福の逆さ貼り」の意味

この伝説をきっかけに、春節には「福」の字を逆さに貼ることが一般的になりました。この風習には次のような意味が込められています。

  1. 幸福の到来
    「福を逆さに貼る」ことで「福が到来する(福到)」を象徴します。
  2. ユーモアと機転
    言葉遊びを通じて、日常の中に楽しさや縁起の良さを取り入れる文化的な発想。
  3. 前向きな気持ち
    誤りを恐れず、逆境をチャンスに変える前向きな精神が表れています。

現代の「福の逆さ貼り」

今日では、「福の逆さ貼り」は中国全土で春節の定番風景となっています。

  • 家庭での装飾
    ドアや窓、冷蔵庫など、家中のさまざまな場所に「逆さ福」を貼ります。
  • ビジネスにも応用
    店舗やオフィスでも「逆さ福」が飾られ、商売繁盛を願う象徴となっています。
  • デジタル時代の「福」
    WeChatやSNS上で「逆さ福」のステッカーや絵文字が送られることも多く、現代風の春節祝いとして楽しまれています。

結論:幸福を呼び込む「逆さ福」

「福の逆さ貼り」は、偶然の出来事から生まれた習慣ですが、その背景には人々の機転やユーモア、そして幸せを願う心が込められています。春節の際には、ぜひ「福」を逆さに貼り、その意味に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

次回のシリーズでは、春節のもう一つの伝説、「爆竹の由来」をご紹介します。どうぞお楽しみに!

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